コードブルー スピンオフ 第1話 感想&あらすじ徹底ネタバレ解説

「劇場版コード・ブルー」公開を控え、7月23日より5日に渡ってスピンオフドラマが放送される。

サブタイトルは「もう一つの日常」

医師としてはまだ成長途上にあるフェロー達が主役のショートドラマである。

コードブルーと名の付くドラマは全て濃厚に扱ってきたこのブログ。

今回ももちろん、全話に渡って徹底解説していく。

 

なお、内容としては相変わらずメッセージ性に富んでおり、テーマの選び方も非常に秀逸

映画に向けて一気に期待が加速する内容となっている

ぜひこの解説記事を読んでさらに楽しんでいただければと思う。

※地域によっては放送されていないところもありますが、放送終了後FODで見ることができます。スマホでも簡単に見られますので、この機会にぜひ登録してみてください。

FODプレミアム公式ホームページへ
※入会後31日間無料です。

劇場版コードブルーのネタバレなし記事はこちら!

【ネタバレなし】「劇場版コード・ブルー」試写会 感想&解説

 

広告

今回のあらすじ

灰谷(成田凌)は、ICUで外傷性腎損傷の少年の対応に悩んでいた。

腎臓周囲に尿の漏れがあるため、救命センターでは手術の方針となっていたが、少年の父親がネット記事を見て反論を唱えたからだ。

父親は、ネットには「保存的治療」、つまり「手術せずに治すべき」と書いてあると主張する。

相変わらず自分に自信の持てない灰谷は、

「保存的治療で経過を見ることもありますが・・・」

と、その主張に明らかに動揺を見せてしまう。

 

ところが、少年はその後急変しショック状態に。

保存的治療が有効、という父親の意見に惑わされている灰谷は、手術ではなく塞栓療法(血管を詰めるカテーテル治療)を行おうとエコーの準備を指示するが、ここで毅然と名取(有岡大貴)が反論。

「俺たちは医学部で6年、研修医で3年、実際に患者を相手に学んできた。読んできた医学書だって100冊じゃきかないだろ。」

「誰が書いたか分からないようなネットの情報なんてほっとけ!コウタくんの体を誰よりもわかってるのはお前だろ!」

 

名取の冷静な判断により、手術によって少年を救命できたものの、その後やってきた父親は案の定、

「保存的治療じゃダメだったんですか!?」

と不信感をあらわにする。

相変わらず動揺する灰谷に再び名取は、ネット記事の情報に従っていたら少年を救えなかったと説明し、

「今回コウタくんを救ったのはこのスマホじゃない、この灰谷先生です」

と強く父親に主張。

父親を納得させてしまったのだった。

 

私がこれまで書いてきたように、名取と灰谷は対照的で興味深いキャラ設定である。

名取は、医学に対する向上心に欠けるが、患者には冷静に対応できるドライな性格。

一方の灰谷は温厚で勉強家だが、精神的トラウマで一時ヘリに乗れなくなるなどメンタル面での弱さを持ち、急な場面での柔軟な対応は苦手である。

 

今回やってきた、

「ネットの誤った情報を信用した患者さんに治療方針について反論される」

というのは、まさに現代の医療現場で私たちがしばしば遭遇する「困ったシチュエーション」の典型例

名取が途中で灰谷を諭したように、特にフェローのような若手の医師がこうした患者さんに対応する時は、

「科全体で話し合った結果、これが患者さんに最も適切な方法だというコンセンサスが得られている」

として、「科の総意」であることを強調することが大切だ。

患者さんにとっては、担当している医師が若手であるほど信用できないのは当然だからである。

灰谷は今回この事例でこのことを痛感しただろう。

 

さて、今回の腎損傷の対応として、少年の父親の主張は医学的に正しいのか?

と疑問に思った方も多いだろう。

これについて簡単に説明しておこう。

 

外傷性腎損傷の適切な対応は?

外傷性腎損傷とは、その名の通り外傷によって腎臓に傷がついたり、断裂したりすること

腎臓は、全身の血液が流れ込んで尿を生成する臓器であるため、損傷によって尿の漏出や出血が問題となる

また、腎臓周囲には大腸や脾臓、膵臓といった他の臓器も近接しているため、

「腎臓以外の損傷はないか?」

も非常に大切なポイントだ。

 

今回は、「尿の漏れ」だけに注目すれば、確かに手術せずに保存的治療(手術なし、内科的な治療)を提案した父親の意見には一理ある

しかし一方で、腎臓が深い部分まで損傷している場合に保存的治療を行うためには、

「血行動態が安定していること」

「尿の漏れが持続進行していないこと」

が必要条件であり、さらに、

「生命を脅かす合併損傷を見落とさないよう注意する」

とガイドライン上も忠告されている。

 

保存的治療を選択するには、「本当に手術しなくても大丈夫か?」をかなり正確に、慎重に判断する必要がある。

ここの判断を間違えると、治療が後手に回り、患者さんの負担を減らすつもりがかえってリスクにさらしてしまうことになるからだ。

 

今回、少年が大出血を起こしてショックとなったのは、腎臓が深い部分まで損傷し、周囲の大血管の合併損傷があったためだ。

また、尿の漏れが持続的に進行していた可能性もある。

急変のリスクがあるから手術を検討する、という科としての方針が正しかったということである。

 

患者さんがネットなどで調べる情報は、私たちにとって、

「状況によっては一理あるが、今の患者さんには当てはまらない」

と考えられるものが非常に多い。

医療情報を調べるのは簡単だ。

だが本当に難しいのは、

「その医療情報が今目の前にある個々の症例に適応できるかどうか」

の判断である。

これは、背景知識が十分な専門家であってもなお非常に難しいことである。

広告

 

真の意味で親身にはなれない医者

名取は正しい説明で父親を納得させ、灰谷を窮地から救ったわけだが、その後そのやりとりを見ていた橘(椎名桔平)に叱られることになる。

 

「父親に謝ってこい」

「親っていうのはな、ちょっとした変化を見逃したことで自分の人生に取り返しのつかないことをしてしまったんじゃないかって不安になるんだ」

 

過去に息子の心疾患の治療に悩んだ経験から、「(親は)自分のこと以上に悩むものだ」と名取に打ち明けた橘は、

「お前はまだ親の不安を知らない、たとえ正しいことでもそれを知らないお前が親を責めるべきじゃない」

と冷静に諭す。

 

こうした橘の忠告も、若手医師にとっては非常に重要なメッセージである。

そもそも(私も含め)若手の医師は、たいてい人生経験は患者さんより短い

 

まだ結婚していない

父親や母親になったことがない

高齢者の介護を経験したことがない

 

こうした人生経験の不足は、どれだけ医学的知識を磨いても、どれだけ難しい症例を経験しても、決して補うことができない

橘の言う、

「お前はまだ親の不安を知らない」

というのは、そういう面での未熟さを自覚すべきだ、という重要な教育である。

私たちはどれほど年老いても、本当に全ての患者さんの身になって考えることはできない。

医師に求められるのは、

「一生かけても分からない、ということが分かっている」

という謙虚さである。

 

しかし橘は名取を厳しく叱った後で、

「だが同僚のために熱くなることは悪くない」

と名取をフォローする。

かつてはこうした熱さを微塵も見せなかった名取の成長を、肌に触れて感じたからである。


現在FODで1st、スペシャル版、2nd、3rd SEASON全話が期間限定無料で視聴できます

ぜひ登録することをオススメします↓

劇場版コードブルーのネタバレなし記事はこちら!

【ネタバレなし】「劇場版コード・ブルー」試写会 感想&解説

コードブルー1st〜3rdのあらすじまとめはこちら!

コードブルーのあらすじを1st〜3rd SEASONまでおさらい!総まとめ集

(参考文献)日本泌尿器科学会「腎外傷診療ガイドライン 2016年版」

広告


医師。専門は消化器外科。二児の父。
ブログ開設4ヶ月後に月間67万PV達成
時事通信社医療情報サイト「時事メディカル」
「教えて!けいゆう先生」のコーナーで定期連載中。
エムスリーでも連載中&「LIFESTYLE」企画・監修。
「劇場版コード・ブルー」公開前イベントに出演。
プロフィール詳細はこちら

コードブルー スピンオフ 第1話 感想&あらすじ徹底ネタバレ解説」への10件のフィードバック

  1. かなちゃん

    ネット情報やテレビで言ってたけど・・なんて言って質問してくる患者さん 昔に比べて本当〜に多くなりましたね。最近は「採血だけで癌がわかるの?」なんて聞かれることも多いです(笑)
    先生の記事が もっともっと広まるといいな(^^) って つくづく思っちゃいます

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      ものすごく多いです。まあ多くはこちらが説明すれば「そうなんですね」と理解されて誤解が深まることは防げるんですが、、
      やはりネットやテレビなど、さらされる医療情報があまりに多く、それをどう利用するかが難しくなっているからでしょうね…
      ネットにはネットで対抗するのが一番なので、引き続き頑張ります!

      返信
  2. なりお

    いつも楽しくブログを拝見しております。
    スピンオフの方は、地方によって放送時間がバラバラのようですが、FODの方では関東地方で放送済のエピソードは視聴できるようですよ。
    私も熊本県在住ですが、FODの方でエピソード1を視聴できました。
    ご参考まで。

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      教えていただき、ありがとうございます。
      確認しましたが、確かに見られますね。
      追記しておきました。

      返信
  3. ふくたん

    けいゆう先生おはようございます。こちらでは、放送されていないのですが、ネットで今見れました。
    またむかつくフェローの話かと、ちょっと気持ちが沈んだけど、さすがコードブルー,大切な事をきちんと盛り込んでくれます。内容はまさに,今タイムリーなものでした。私ごとですが、変形性膝関節症といわれ,先週二回めの注射を受けたのですが、前回と全く違い,最初から痛みがあったのと、腫れやつっぱり感があり不安になってネット検索したところ、関節内の注射は痛くないが、関節外に液が漏れると様々な症状がでるとあり、担当医に不信感を抱いています。通える整形外科は、近くになく正直、あまり気の進まない病院で、仕方なく選んだ所であり、先生はぶっきらぼうで、怖くて母の通院時から苦手な先生なのです。
    おっと、長くなりました。リハビリの訓練士さんには、この気持ちを伝えようかと思ってましたが、弱い立場の患者は、余計な事は言わずに我慢するしかないのかとも思ってます。毎週待ち時間もかなり長くて、通院がほんとに苦痛です。
    話ずれてすみませんでした。ドラマですが、自分の事と重ねて見ています。正直、桔平先生みたいに、患者側の背景まで、組みとって下さる先生にはたして出会えているのかなと思いました。
    医療は身近です。いつの時も。

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      大事なテーマでしたね。短いドラマですが、それを題材にどうみなさんに有益な情報を伝えるかを考えていきたいと思います。
      医師とは相性もありますし、人間的に優れた人でも合わない人はとことん合いませんし、人間関係は難しいものです。
      その点、ドラマはキャラクターをデフォルメして分かりやすくしている分、学ぶところも多いですね。

      返信
  4. トラッキー

    けいゆう先生、更新お疲れ様です。

    「お前はまだ親の不安を知らない」のセリフですが本当にその通りで、私も親になるまで何となくしか分かりませんでした。一番上の子の出産の時なんか超の付く難産で、結局生まれてすぐに掛かりつけの産科から母子医療センターに搬送されて生きた心地しなかったですよ(笑)。

    子供の健康というのは親にとってはとても大切な事ですからね。今は何でもネット検索出来る時代だから、医療従事者も悩ましいところでしょうね。間違いではない医療知識でも、その患者さんに当てはまるかは実際診療してみないことには判断できないですよね。

    あと先生に質問なんですが、尿って腹腔内に漏れても少量なら大丈夫なんですか?確かに小腸などの内容物ほど細菌だらけではない(疾患が無ければ基本膀胱内には細菌はいないんでしたっけ?)とは思うんですが、尿も排泄物ですよね?お腹の中に漏れちゃ少量でもまずいんじゃないの?って素人としては思ってしまうんですが・・・。

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      私も子供ができるまで親の気持ちなんて絶対にわからなかったと実感しますし、それでも中学生や高校生の子供を持つ親のことは依然として分からない、と思っています。
      こういう謙虚さというか、無知への畏れは忘れてはならないと思っています。
      尿は便と違い、腹腔内に漏れても緊急手術は不要であることが多いです(便ならまず手術が必要ですが)。
      厳密に言うと、腎臓が損傷して漏れるのは腹腔内ではなく後腹膜という別の空間なのですが、いずれにしても、細菌学的には綺麗なので少量なら問題ない、ということですね。

      返信
  5. りこ

    けいゆう先生、こんばんは。
    やはり、情報が溢れていて自身には該当しないかもしれないと思いつつ、私の場合調べはじめると止まりません。笑
    医師の診察を受ける際には、医師の話を最後まで聞き
    その話しについて、質問として自分の得ていることを話すようにしています。
    自分の主張を通そうとする勇気はありません。不安ですから
    医師の説明を理解出来るよう、調べることは無駄ではないですよね?

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      事前に調べていくと質問もしやすくなりますし、受診後に聞かねばならないことがたくさん出てくるよりはずっといいと思いますよ。
      検査や治療を受ける時は、疑問は全て解決しておくことが大切です。
      その点で質問することは全く悪いことではないですよ。

      返信

‘コメントはこちらから’

全てのコメントにはお答えできませんが、ご了承下さい。

下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。