第3話は各フェロー達が主役だったが、第4話は新人ナースの雪村(馬場ふみか)が主役である。
雪村は、複雑な家庭環境の中、自力で自分の人生を切り開いてきた自負があり、プライドも人一倍高い。
いつもつっけんどんな口調であまり愛想がなく、フェローに対して厳しく当たったり馬鹿にしたりすることもある。
第3話は、そんな雪村の成長物語。
今回はテーマが看護であり、専門外の私が看護について語るのは難しいため、感じたことを自由に書いてみることにした。
解説ではなく、ただの所感であることをお許しいただきたい。
今回のあらすじ
救急部の新人看護師雪村は、小児科病棟での研修初日、満面の笑みで迎えてくれた中堅看護師の江藤に驚く。
いつも笑顔で愛想を振りまき、雪村も引いてしまうほどのハイテンション。
江藤は、将来の夢が医者だという患児に、小さな白衣におもちゃの聴診器で「医者ごっこ」をさせてあげるなど、患児にも人一倍手をかける。
ところが、江藤が陰で「スマイリーさん」と呼ばれ、他の看護師から悪口を言われている様子を雪村は目撃する。
「疲れている時にあの笑顔を見るとキツい」
「笑顔がなんか不気味」
そう影口を叩く看護師が患児に対しても冷たく当たる姿を見て、雪村は複雑な表情を浮かべる。
ある日雪村は、担当の患児が嘔吐し、ICUに入室になったことを知る。
慌ててICUに向かうと、そこには江藤の姿があった。
少年に対し、
「私笑ってるだけで何もしてやれなかった、ごめんね」
と言う江藤を見て雪村は、
「いつもどうしてそんなに笑顔でいられるんですか?」
と日頃の疑問を投げかける。
江藤は、実は自分が人見知りで、患者さんにもうまく話しかけられず、無表情で周囲に疎まれたことがきっかけで笑顔を作るようにしたことを明かし、
「(笑顔でも)結局何も変わらなかった。だから決めたの。無表情でも笑顔でも周りから疎まれるならせめて笑顔でいようって」
と、周囲から悪口を言われていることも知った上で無理に笑顔を作っていたことを雪村に伝えた。
あえて笑顔を作らず無愛想でいることで自分のプライドを保っていた雪村はこの言葉を聞き、涙を浮かべたのだった。
愛想の悪い看護師、いい看護師
第4話では、いつも愛想の良い看護師が疎まれ、無愛想な看護師が幅を利かせている、という病棟が描かれる。
確かに、こういう病棟を見ることは実際ある。
むろん、いつも優しい看護師は、疎まれるどころか若手看護師に好かれているケースも多い。
疎まれる人はたいてい、人柄が良いものの仕事のパフォーマンスが「イマイチ」で、他の看護師の仕事を増やすなど、業務上の欠点を持っているものだ。
今回の看護師が、看護師として仕事ができるのかどうかまでは描かれなかったが、もしかすると不器用であまりテキパキ動けるタイプではないのかもしれない。
だが、「他の看護師から見て評価が高いか」と同時に「患者さんから信頼を勝ち取れるか」も大切だと私は思う。
私は医師になってから長期入院を経験し、医師と患者の両面から看護師を見る機会に恵まれた。
入院したのは勤務先とは違う病院で、あくまで第三者の目線で看護師を見ることができた。
医師として病棟で働く時は、患者さんに多少は愛想がなくても、テキパキ仕事ができ、頭の回転が早い看護師が好ましいと思っていた。
臨床的にも患者さんにプラスだ、と考えていた。
ところが入院して患者の立場になってみると、笑顔で愛想よく対応してくれる看護師にいかに救われるか、ということに気づいた。
入院中は、患者にとってはとにかく不安なことが多い。
手術後の傷の周りが腫れてきたが正常の経過なのか?
妙に痛みが強いが大丈夫か?
吐き気がするが投与した薬のせいではないか?
頻繁に病室には来ない医師と違って、定期的に訪れる看護師にはこの不安を吐露したくなるのが患者だ。
ところが、こうした不安を聞こうともせず、とにかく早くラウンドを終えたい一心の看護師がやってくることも少なくなかった。
一方で、笑顔でじっくり話を聞いてくれ、こうした不安を傾聴してくれる看護師ほど、貴重な存在はなかった。
医学的知識を持つ私ですらこうなのだから、非専門家である患者さんなら、なおさらそうではないだろうか。
結局感じの良い看護師ばかりに相談してしまい、人の良い看護師に限って仕事が増える、という事実にも気づけた。
この話を私の妻(看護師)に打ち明けたところ、妻は、
「看護師にはプラスαが大事」
と言った。
「ラウンド(担当患者さんを順に回ること)など、早く終えようと思ったらいくらでも早く終えられる。
患者さんには愛想を振りまかず、話は早々に切り上げて、必要最低限の仕事だけをしていればいい。
しかし、それで終えるだけの仕事をしたいなら、何のために看護師になったのか?」
患者さんの話をじっくり聞いたり、足浴や洗髪をして気持ち良いと言ってもらったり。
こういう「プラスα」は自分の労力を増やすことになるけれど、これが看護師の仕事であり、ここにこそ楽しみを見出すことができるのではないか。
その点で第4話は、看護師という仕事の大事な一面を描いていたと言えるだろう。
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医師にとっても大切なこと
患者さんに笑顔で接し、話しかけられやすい存在であることは、医師にとっても大切なことだ。
愛想の悪い医師も中にはいるが、こういう医師ほど患者さんの訴えをうまく聞き取れず、結果として対応に苦労していることも多い。
また、医師は看護師などの他職種のメンバーから話しかけられやすい存在であることも大切だ。
こういう医師ほど、より適切なタイミングで大事な情報を得ることができるからである。
3rd SEASONで、無愛想で技術を磨くことだけを目指す雪村を見かねた先輩ナースの冴島(比嘉愛未)は、
「あなたの顔を見るとみんなが安心する、そんなナースになってもらいたいの」
と看護師としてのあり方を教育したこともある。
この教育はある意味、看護師だけでなく、患者さんに接するあらゆる医療者にとって重要な提言であると言えることを、今回改めて痛感したのである。
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