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大腸がん検診を徹底解説!検査の種類と方法、なぜ受けるべきか?

大腸がんは今や、我が国で最も多いがんになりつつあります。

2018年の癌罹患数男女総合の第1位は大腸癌です(国立がん研究センターの予測統計による)。

大腸がんは、検診によって初期の段階で発見できれば全く怖い病気ではありません。

ステージ1(最も初期)の段階の大腸がんの5年生存率は約97%、つまりほぼ全ての人は手術か内視鏡治療で治癒します。

しかしステージ4の(最も進行した)段階の大腸がんの5年生存率は約20%

同じ大腸がんでも、これほどまでに生存率が変わってきます

ではどうすれば初期の段階で発見できるのでしょうか?

 

その方法は、症状が出る前に大腸がん検診を受けることです。

大腸がんは、初期の段階ではほとんど症状はないため、検診以外では見つけられません。

しかし「大腸がん検診が必要!」と言っても、

どんな検査をするの?

どこで検診が受けられるの?

何歳から受ければいいの?

どのくらいお金がかかるの?

検診でがんが必ずわかるの?

など様々な疑問があるかと思います。

この記事では、これらの疑問にわかりやすくお答えします。

このページで全ての疑問が解決しますので、ご安心ください。

 

大腸がん検診のしくみ

大腸がん検診で行う検査は「便潜血検査」です。

便潜血(べんせんけつ)って何?

と思った方、わかりやすく説明します。

 

便潜血検査とは?

「潜血(せんけつ)」とは、「目に見えない血」のことです(「潜水艦」の「潜」ですね)。

真っ赤な血のことを「鮮血(せんけつ)」と言うので紛らわしいのですが、鮮血は「目に見える血」です。

これが便に混じれば「血便」です。

 

しかし、大腸がんは初期の段階で血便が出ることはあまりありません

早期発見のためには、目で見えないほどわずかな出血がある段階で発見する必要があります。

便潜血検査では、赤血球に含まれるわずかなヘモグロビンを検出することができるため、これが可能なのです(「免疫法」と呼ばれる方法です)。

毎年便潜血検査を受けることで、大腸がんによる死亡が60%減少するというデータもあり、有用性は明らかです。

便潜血検査で「陽性」(異常あり)が出ると、後述する精密検査(内視鏡検査)を受けることになります。

(正常は「陰性」です)

 

検査の実際

便潜血検査は、いわゆる「検便」です。

事前に専用の容器を取りに行き、便の表面を採便棒(めんぼう)でこすり取って検査に提出します。

これを2日間の便で計2回行う「2日法」と呼ばれる方法が一般的です。

便をとるだけですから、全く苦痛はなく副作用のリスクもゼロです。

 

どこで受けるの?受けるべき年齢と頻度は?

対象年齢40歳以上で、年に1回受けられます。

40歳未満で受診したい方は任意型検診という方法がありますので、後述します)

実施するのは、地方自治体(市区町村)です。

実際に検査が行われる場所は、お住まいの地域(市区町村)のホームページに分かりやすく書かれています。

一般的には、市内の保健所、保健福祉センター、指定の医療機関、小学校などの検診会場で行われます。

 

1年を通じていつでも行っており、曜日や時間が指定されているため、それに合わせて検査キット(専用の容器)を取りに行きます。

日程はホームページで確認できるところもあれば、直接電話で問い合わせ、というところもあります。

また地域によっては、郵送で受け付けてくれるところもあります。

容器が送られてきて、それに便を採取して郵送する、という形です。

まず、お住まいの市区町村の役所のホームページを確認してみてください。

 

料金はどのくらい?

検診の費用は地域によって様々です。

一般的には、300〜900円程度が相場ですので非常に安価です。

地域によっては無料のところもありますし、配布された無料クーポンを使えば無料、というところもあります。

こちらも地域によってルールは異なります。

お住まいの地域の役所のホームページをご確認ください。

 

検査結果はいつわかるの?

これも地域によって様々です。

検査後10日~1ヵ月ほどで、文書で結果が送られてくることが一般的です。

 

便潜血検査のデメリット

便潜血検査は、大腸がんの早期発見に最も重要な検査です。

しかし、以下のようなデメリットもあります。

 

大腸がん以外でも陽性になることがある

当然、便に血が混じる可能性のある病気では、全て検査結果が陽性になる可能性があります

例えば、痔(痔核)や、良性の大腸ポリープ憩室出血など、挙げればきりがありません。

しかも、病気がなくても大腸の表面に傷がついてわずかに出血していれば検査結果は陽性になりえます。

 

したがって、陽性になったからといって大腸がんと確定することはなく、後述する精密検査が必要になるだけです。

精密検査を行なっても結局便潜血陽性の原因が分からなかった、という人も大勢います。

ちなみに便潜血反応が陽性だった人のうち、実際に癌が発見される頻度は6-7%とされています。

 

明らかに痔から出血がある、という時は、便潜血検査を受けるのは避けましょう。

また、女性の場合は月経中(生理中)だと便に血液が付着し、便潜血検査が陽性になる可能性があります。

生理中の便潜血検査も避けるようにしましょう(生理中は検査を受けられないルールとなっている地域もあります)。

 

大腸がんでも陰性になることがある

逆に、大腸がんがあるのに検査が陽性にならない、というケースもあります

大腸がんがある人では、便潜血検査が陽性になる確率(陽性率)は30.0〜92.9%とされています。

かなり幅がありますが、便潜血検査で見つけられない大腸がんもある、ということです。

 

市区町村が公費の補助によって行う、こうした検診を「対策型検診」と呼びます。

一般に「がん検診」というときはこの「対策型検診」のことを指します。

国民全体の死亡率減少を目的として、公共の予防対策として行っているために「破格の安価」なわけですね。

 

異常なら大腸カメラで精密検査

便潜血反応が陽性なら、精密検査として病院で大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けることになります。

検査を行うのは、消化器系の医師(主に消化器内科医)です。

精密検査を受ける際は、消化器内科を受診するとスムーズでしょう。

全大腸内視鏡検査(普通の大腸カメラ)で大腸がんを見つけられる確率は95%以上とされています。

 

大腸カメラでは、良性のポリープが見つかることもよくあります。

ポリープは、ものによっては悪性化する可能性のあるものもあります。

大腸カメラでは、その場でポリープを切除してしまうこともできます

悪性(大腸がん)を疑うような病変でも、大きさや形などが条件を満たせば大腸カメラを使って切除できます

(病院の設備、人員、患者さんの内服状況によっては後日入院して切除を行うこともあります)

 

良性か悪性かがその場で判断しにくい病変があれば、組織を一部採取し、病理検査(顕微鏡で組織を見る検査)を行うことも可能です。

実際、ほぼ全ての早期癌は大腸カメラによって診断がつきます

 

では、なぜ大腸カメラは大腸がん検診に含まれていないのでしょうか?

大腸カメラには、以下のようなデメリットやリスクがあるためです。

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大腸カメラのデメリット

前処置はかなり大変

大腸カメラを受ける場合は、前日昼から食事制限(消化の良いものを少量摂取)があります。

また、寝る前に下剤を飲み、何度か夜間に排便した上で、さらに検査当日に病院で2Lの強力な下剤を2〜3時間かけて飲み、大腸を空っぽにします。

便が透明に近い水になれば、ようやく検査を受けられる状態になります。

高齢の方や目の悪い方は自力で便の性状が確認しにくいため、必ず複数の看護師が詰めてサポートする必要があります。

 

なお、検査は一人当たり15〜20分程度かかります(ポリープを一緒に切除したり組織を採る場合はもう少し長くなります)。

お腹の手術をしたことがある方はさらに時間がかかることもあります(お腹の術後は癒着があるためカメラが通りにくい)。

人によっては大腸が長く曲がりくねっていてカメラが通りにくいこともあります。

詳細は以下の記事をご覧ください。

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)は痛い?下剤は辛い?鎮静必要?

 

一定の確率で偶発症(合併症)が起こる

確率は非常に低いですが、

大腸の壁に傷がついて出血する

大腸の壁に穴があく(穿孔)

などの偶発症が生じるリスクがあります。

学会の調査によれば、偶発症の発生率は0.012%、死亡率は0.00088%と極めて低いものです。

しかし、ひとたび穿孔を起こすと大きな手術が必要になってしまうことも多いため、デメリットとしては大きいと言えます。

 

また、偶発症のリスクは人によって異なります。

高齢者や重い持病がある人はリスクが高くなります。

身体的リスクがほぼ全くない便潜血検査に比べると、大腸カメラのメリットがリスクより確実に上回る、とは考えられていません

以上から、大腸カメラは対策型検診として推奨されていません。

 

なお、精密検査として以前はバリウムを用いた注腸X線検査(注腸造影検査)を行なっていた時期もあります。

近年では大腸カメラの方が診断力が高いため、精密検査としてはまず大腸カメラを行うのが一般的です。

 

任意型検診とは?

ここまでは、地方自治体が主体で行う「対策型検診」としての、いわゆる「大腸がん検診」について述べました。

これに対し、人間ドックのように、自費で自由に受ける検診を「任意型検診」と呼びます。

メリットとデメリットを十分理解した上で、本人が検査を自ら選んで受ける検診です

 

前述の通り40歳以上の方はいつでも便潜血検査を安価で受けられますから、大腸がんに対して任意型検診を受けるケースでは、

40歳未満(20〜30代)で大腸がん検診を受けたいケース

検診として最初から大腸カメラを受けておきたいケース

のどちらかでしょう。

大腸がんのリスクは人によって全く異なるため、得られるメリットは様々です。

また、大腸カメラには上述したデメリットがあります。

任意型検診を受ける際には、こうしたデメリットを十分に理解しておく必要があります。

 

任意型検診の受診は自費ですので、大腸カメラであれば、費用は1.5〜3万円程度が相場です。

検診は病気ではない無症状の方に行うものですから、保険は適用されません

何らかの症状があれば、検診ではなく病院で通常の診療を受けなくてはなりません

その点は理解しておきましょう。

 

早期発見に使えない検査

ここまで読んで、

腫瘍マーカーや、CT、MRI、PETといった画像検査で大腸がん検診はできないの?

と疑問に思った方がいるかもしれません。

残念ながら、これらの検査は大腸がんの早期発見には役立ちません。

 

まず、大腸がんの腫瘍マーカーは、それなりに進行してからでないと上昇しません。

初期の大腸がんの場合、腫瘍マーカーはほぼ必ず正常値です。

腫瘍マーカーが正常だからといって「大腸がんでない」とは全く言えません

腫瘍マーカーについては、以下の記事をご参照ください。

腫瘍マーカーはがんの早期発見や検診に有効なのか?分かりやすく解説

 

CTやMRI、PETなどの画像検査も同じです。

初期の段階の小さな大腸がんは画像検査で検出できません

「大腸カメラで明らかに大腸がんがある」という人でも、小さい早期がんなら、画像検査では「異常なし(病変は検出できない)」ということがほとんどです。

画像検査も早期発見には全く使えません。

 

また、大腸カメラで大腸がんが発覚すれば、進行度を正確に判断するため(転移の有無など)、さらなる精密検査としてCT(場合によってはMRIやPET)を行います

腫瘍マーカーの測定も行います。

「早期の発見」には役立ちませんが、精密検査としては必須の検査だということです。


今回は大腸がん検診についてまとめました。

大腸がんは、年齢的には40歳頃から増加し60歳台で最多になります

早期発見できれば比較的容易に治療が可能ながんです。

定期的な検診で早期発見を目指しましょう。

 

以下の記事もご参照ください。

大腸がん内視鏡治療の全て|適応、利点・欠点や入院期間を徹底解説

(参考文献)
大腸ポリープ診療ガイドライン(日本消化器病学会)
消化器外科専門医へのminimal requirements (Medical View)
厚生労働省「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」
国立がん研究センターがん情報サービス(医療関係者向けサイト)