大腸癌の手術を受ける方は、どのくらい入院しなければならないのか前もって知っておきたいかと思います。
職場にいつまで入院するか目処を伝えないといけない場合もあるでしょうし、あるいは医療保険の関係で入院期間を知りたい方もいるかもしれません。
また、手術後の食事や生活で気をつけることも、事前に知っておきたいでしょう。
外科医として大腸がんの手術を多く行ってきた経験から、大腸がん手術の入院期間と術後の注意点についてわかりやすくまとめます。
これを読めば、術後のイメージがずいぶんつかみやすくなると思います。
どのくらいの期間、入院が必要?
大腸がんの手術では、術後に大きな問題がなければ、手術翌日から数えて1週間〜2週間の入院が一般的です(病院によりますが多くは10日以内に退院されます)。
大腸がんには腹腔鏡手術と開腹手術があり、開腹手術の方がやや長い傾向がありますが、それでも2、3日程度しか変わりません。
大腸がんの手術について詳しい記事はこちら
ただし、手術の種類や術後の回復具合によって以下のような例外があり、入院が長引く場合があります。
他の臓器も切除するような大きな手術
大腸がんの手術は、場合によっては小腸や腎臓、膀胱といった周辺の臓器を一緒に切除しなければならないことがあります(非常に進行した癌の場合です)。
この場合は術後の回復に時間がかかるため、さらに1週間〜2週間は余分にかかると考えてください。
人工肛門を造設した場合
大腸がんの手術はときに、人工肛門を作らなければならない場合があります。
医師からもし人工肛門の可能性を伝えられていたら、その分入院期間が長引くと考えてください。
一般的には1週間ほど余分にかかります。
その理由は人工肛門のトレーニングが必要だからです。
自分で人工肛門から便を出したり、パウチを交換したり、といったことを、退院後は一人でできるようになるための練習です(家族に協力してもらうこともあります)。
人工肛門について詳しく知りたい方はこちら
術後に合併症が起こった場合
最初に「術後に大きな問題がなければ」と書きました。
一定の割合で術後に何らかの問題が起こり、入院が長引くことがあります。
これを術後合併症と呼びます。
どんな合併症が起こるかで、どのくらい入院が必要かはかなり異なりますので一概には言えませんが、短い場合は1週間、長い場合は月単位で余分に入院期間が発生するとお考えください。
術後に気をつけることは?
食事に関すること
大腸がんの手術は、1.5メートルほどの管状の臓器の一部を切除して再度つなぎ合わせる手術です。
大腸の長さが少し短くはなりますが、胃のように食べたものを貯める袋が小さくなったり形が変わったりするわけではありませんので、食生活にはあまり大きな影響はありません。
消化に良いものを適量食べる、という程度で結構です。
肉や生ものを食べても良いですし、お酒を飲んでも構いません(いずれも「適量」が条件です。)
食べ過ぎは禁物です。
術後のお腹の癒着があり、食べ過ぎると腸閉塞(イレウス)を起こすリスクがあります。
腹八分目を心がけましょう。
排便に関すること
大腸の手術をすると、排便習慣が変わる方がいます。もともと便秘だったのが下痢ぎみになったり、その逆もあります。
大きな問題にはなりませんので心配はいりません。
主治医に相談し、緩下剤(便秘の薬)や整腸剤を処方してもらってコントロールしましょう。
また、直腸の手術をした場合は、便の漏れが一時的に起こることがあります。
直腸は便を溜めておく場所なので、直腸を切除してしまうと便を溜められなくなり、お腹に力を入れたときに失禁を起こすことがあります。
肛門括約筋(肛門を締める筋肉)が弱ってしまったり、括約筋を一部切除するような手術の場合も同じです。
癌が肛門に近い場合は、こういうリスクがあることを覚えておきましょう。
薬でうまくコントロールしつつ、徐々に治していくことが多いですので、心配する必要はありません。
大腸がんの術後は外来に定期的に通院する必要があります。
どのくらいの期間、頻度で通院し、どんな検査をするのか、気になる方は多いでしょう。
また再発が不安な方も多いと思います。
こちらについては以下に詳しくまとめていますので、併せてご覧ください。