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ラジエーションハウス最終回 感想&解説|放射線技師の現実とドラマの脚色

ラジエーションハウス最終回では、初回から伏線となっていた放射線科甘春医師の父の病気の正体が明らかになりました。

慢性的な頭痛や立ちくらみ、うつ症状に悩まされていた父は、低髄液圧症と診断されます。

そのきっかけを作ったのは、やはり主人公の放射線技師、五十嵐(窪田正孝)でした。

五十嵐は、医師免許を持ちながら放射線技師として働く異例の存在です。

その類いまれなる臨床能力が、今回も大いに発揮されたのでした。

 

このサイトでは、ラジエーションハウスを第1話から全て解説してきました。

今回は最終回、ということで、いつものように簡単な医学的解説に加え、このドラマを通して医師の立場から感じたことを書いてみたいと思います。

 

ドラマで多用される脳脊髄液?

甘春医師(本田翼)の父、正一は、甘春総合病院の前院長です。

自転車事故を契機に、頭痛や立ちくらみ、うつ症状、認知機能低下などの慢性的な症状に悩まされ、うつ病と診断されて現場を引退していました。

放射線技師の五十嵐は彼の病状を聞き、再度精密検査を受けるよう提案します。

その結果、病気の正体は低髄液圧症であることが分かりました

 

脳から脊髄までつながる中枢神経は、「脳脊髄液」という透明な液体に包まれています。

この液体は脳の中の「脳室」と呼ばれる部位で作られ、そこから脳周囲〜脊髄周囲のくも膜下腔と呼ばれる空間の中を循環しています

 

実はこの「脳脊髄液」は医療ドラマで扱われることが多く、「コード・ブルー 3rd SEASON」では、事故による頭部外傷で脳室内に溜まった脳脊髄液をチューブで排出するシーンがあります。

また、「コード・ブルー1st SEASON」では、頭部外傷で鼻から髄液が漏れる髄液漏が登場し、「グッドドクター」ではバスケットボールの試合中の外傷で脳内に脳脊髄液が溜まってしまう水頭症が扱われました。

 

今回は、低髄液圧症

何らかの理由でくも膜下腔内の髄液圧が低下することで、今回の正一のような多彩な症状を引き起こします。

交通事故やスポーツ外傷、日常生活での転倒などが原因になるとされています

正一は、自転車による事故が原因と考えられましたね。

 

また、今回の放送で紹介された「ブラッドパッチ」は、この疾患の治療選択肢の一つです。

脳脊髄液が漏れて髄液圧が低下している場合に、くも膜下腔の外側の空間(硬膜外腔)に患者さん自身の血液を注入し、固まった血液が外からフタをするように穴を塞ぐ効果を狙ったものです。

「ブラッド」とは「血液」、「パッチ」は「あて布」といった意味ですね。

むろんこの治療が必ずしもうまくいくとは限らず、治療後にすっきり症状が治ってしまうのはドラマ的な展開ではありますが、

「一見うつ病に見えた患者の抑うつ症状の原因が、別の身体疾患にあった」

というのは、重要な筋書きだったといえるでしょう。

 

実際、様々な身体疾患や薬の副作用が原因で抑うつ症状が起こっている、というケースがあるためです。

先入観にとらわれず、丁寧に病歴を聴取して治療に結びつけた五十嵐の高い臨床力が描かれたわけですね。

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技師のリアルとフィクションの境界

五十嵐は、幼なじみである甘春との約束を忠実に守り、放射線技師を目指しました。

その結果、医師免許を取得してもなお放射線技師として働く道を選んでいました

最後はアメリカの放射線科の権威から技師としてのオファーを受け、渡米を決めます。

 

五十嵐は医師であることを周囲に隠していたため、最終的にこのことが明らかにされた時、周りの技師たちに不信感を持たれてしまいます。

しかし持ち前の誠実さや高い能力が生んだ信頼は崩れず、最後はスタッフらに笑顔で送り出されました。

 

ラジエーションハウスでは、放射線技師たちは医師に対して妙に卑屈で、劣等感を抱いている、というような描写がよく見られました。

また、医師も技師に対してやけに高圧的で、「技師は医師のオーダー通り検査だけしておけばいい」というようなセリフも度々ありましたね。

最終回での「技師でも医者と同じくらい患者を救える」という広瀬(広瀬アリス)のセリフは、

「本来患者を救うのは医師の仕事だが、技師が腕を磨き協力し合うことで、その現状を変えることができる」

というテーマを代弁したものなのでしょう。

 

ドラマでこれまであまり扱われなかった職種を表現する上では、確かにシンプルで分かりやすい筋書きだと思います。

実際「縁の下の力持ち」である技師らを取り巻く人間模様は魅力的で、素晴らしいドラマであったのは間違いありません

 

一方で、ドラマでの放射線技師の姿は現実とはかなり異なる、という点にも注意しておいた方が良いでしょう。

実際には、患者さんやご家族と濃厚に関わって病状について相談したり、必要な検査を指南したり、といった仕事は医師の業務です。

放射線技師は画像検査のプロフェッショナルですから、優秀な技師ほど、医師でもできる仕事は医師に任せたいでしょうし、「技師だからこそできる仕事」に誇りを持っているものだと思います。

 

技師が自らの能力を磨き、高みを目指した時、その先に医師の存在があるのではありません

臨床現場では、医師を含め多様な職種がそれぞれ分業し、それぞれの専門性を生かして「自分たちだからこそできる仕事」を大切にして働いています

こうした職種間での分業・協力体制が、患者さんにより良い医療を提供する礎になっています。

 

少なくとも、ドラマを見て「放射線技師を目指したい」と思った学生さんたちは、ドラマで描かれた技師の業務内容や目指すべき道筋、マインドは、現実とは異なる、ということは知っておいた方がよいでしょう。

もちろん放射線技師のリアルな生活もまた、きっとドラマに満ちているはずです。

 

もちろんドラマはエンタメですから、現実離れは当たり前。

ドラマの影響は絶大ですので、「大切でありながらあまり知られていない職種」を知ってもらう、という点で見れば、素晴らしい目的を達成していたと思います

医療ドラマでは医師にスポットが当たりがちですが、今後もむしろ医師以外の職種にスポットを当て、その職種と医師との関わりを描くドラマを見てみたいと感じさせられたドラマでした。

 

このサイトでは、全話を通してラジエーションハウスを解説してきました。

これまでの記事もぜひ、読んでみてください。

ラジエーションハウス第1話 感想&解説|金属アーチファクトと造影剤アレルギー

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(参考文献)
CSF JAPAN
厚生労働省「脳脊髄液減少症」について