コードブルー1st 第9話解説②|翔北で最も有能な救急医が森本医師である理由

前回の記事では、黒田(柳葉敏郎)の腕を切断しなければならなかった理由について詳しく説明した。

黒田の腕の再接合を行ったのは森本(勝村政信)だった。

これは医師としては驚くべきことである。

まず前半は、これがいかにすごいことなのか(不自然なこととも言えるが)を説明する。

 

後半は、第9話のもう一つのメインストーリーとなった黒田の息子である健一くんの手術について解説する。

というのも、「RCC」「クロスマッチ」「プロリン」など、手術中に頻繁に出てくるが意味があまり分からない、と思う方が多そうな単語が多かったためだ。

これらはコードブルーだけでなく、多くの医療ドラマでもよく出てくる専門用語である。

この機会にわかりやすく説明しておこう。

 

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実は翔北で一番有能なのは森本医師

一般的な病院では、指や腕の切断後の再接合はどのように行われているかご存知だろうか?

実は、整形外科形成外科の、さらに再建外科技術を持つごく一部の専門家集団が行っている

私が「驚くべきこと」と言ったのは、まさか救急医である森本が、これほど専門的で難しいオペができるほどマイクロサージェリー(顕微鏡手術)に長けているとは思わなかったからだ。

正直言って、衝撃的と言って良い

 

私たちのような外科医でも、マイクロサージェリーの部分だけは形成外科医に依頼する、ということが普通である。

消化器外科手術で言えば、たとえば食道癌での血管縫合が良い例だ。

血管縫合は食道癌の手術でもかなり終盤になることが多く、夜中になってから形成外科医を呼ぶことも多い。

形成外科の先生方には、そのためだけに病院に待機してもらうことになるため、結構気まずい思いをすることもある。

そのくらいマイクロサージェリーができる人たちというのは専門性の高い技術を持つ職人のような集団だと言うことだ。

(※外科医の中でも肝移植を専門とする医師は自らマイクロの技術を持つ)

 

森本は救急医でありながら、この難しい手術をフェローを助手にしてやってのけてしまう

ここまで達するには、かなり長期間のマイクロサージェリーのトレーニングが必要だっただろう。

もちろん腹部の手術も楽々できるだろうし、恐ろしく有能な救急医である

残念ながら救急部なら、切断再接合術くらいしかこの腕の見せ所はない。

こういう症例は翔北でも年に数例だろう。

どう考えても、肩こりグッズを片手に轟さんと雑談をさせておくにはもったいなさすぎる人材である。

お茶目な性格が目立つ彼だが、このギャップを知ればきっと轟さんも振り向いてくれるに違いない。

 

ちなみに腕の切断は、接合だけでなく、術後の機能回復が非常に大切である。

ここで最も重要になるのがリハビリだ。

よって腕の切断後の再接合術は、リハビリの知識も豊富な整形外科医が行うことが多い(指は形成外科医が行う病院も多い)。

どんなオペでもそうだが、重要なのは手術を行う技術だけではない。

同じくらい術後の管理が大切である

術後管理のクオリティが低ければ、どれだけ手術が上手でも結果がうまくいくことはない

森本には、技術に長けているだけでなく、リハビリを含め術後の綿密な管理についても長けていることが求められる。

果たして救急医にここまでする余裕があるだろうか?

私が冒頭で「不自然」と書いたのは、こういう理由もあるのである。

 

ちなみにこのことについては以前私が、

「私、失敗しないので」と言う外科医がいない理由

という記事で詳しく解説しているのでぜひ読んでみてほしい。

 

健一くんの手術を細かく解説!

黒田の手術のあとは黒田の息子である健一くんの肝損傷の手術が行われる。

他の手術でも頻繁に出てくる用語で、これまで解説できていないものをここで解説してしまおう。

 

出血量が多いため輸血が必要になった場面であった、

「RCC4単位追加」

「RCC急いで!」

「クロスマッチいらないから大至急RCCもってきて」

というセリフ。

 

これもコードブルーでは度々見られるセリフである。

「RCC」とは「赤血球濃厚液」の略で、赤血球の輸血を行いたいときに使う血液製剤である。

一般に、出血していればまずこの赤血球製剤を輸血する。

時間的に余裕があるときは、血液製剤の一部を患者さんからとった血液と混ぜて反応を見て、「輸血しても大丈夫か」をテストしてから輸血する

これを「クロスマッチ試験」という。

大急ぎのときは、リスクを負ってもスピード重視なので「クロスマッチ試験なし」にせざるを得ない。

これが「クロスマッチいらない」という意味だ。

 

さらに大量に出血すると、血液に含まれる凝固因子(血を固める働きのある物質)が足りなくなるため、赤血球を輸血しても血が固まらなくなる。

そこで次に、

「FFP早く溶かして!」

のようなセリフが登場することが多い。

これについては「コードブルー3 医師が解説|Aライン、レベルワン、FFPの目的とは?」で解説したので、まだご覧になっていない方はぜひ読んでみてほしい。

 

次に今回のような肝損傷では、損傷した部分を縫合して止血する。

今回は三井が、

「3-0プロリン用意して!」

と指示したのち白石が、

「フェルトつけて、早く!」

と言う。

 

コードブルーの手術シーンでは、この「プロリン」「フェルト」もよく出てくる。

「プロリン」は糸の種類の名前だ。

医療ドラマでは、このほかにナイロンシルクもよく出てくるが、実際の現場では他にも多くの種類の糸を様々な局面で使い分けている。

3-0(サンゼロ)は糸の太さを示す数字で、数字が大きいほど細い

3-0は結構太く、だいたい7-0くらいが「髪の毛ほどの細さ」である。

私たち外科医は、だいたい5-0以上に細くなると肉眼で見にくくなるため、ルーペをつけて扱うことが多い。

ルーペがどんなものかについてピンと来ない方は、私のTwitterページのプロフィール写真を見てみていただきたい(ついでにフォローもお願いします、と宣伝)。

私がこのルーペの真ん中につけているのがヘッドライトで、これもかなり強力な味方である。

特に太った患者さんの手術ではかなり奥深いところで操作をすることも多く、このヘッドライトで手元が明るく見やすくなる。

 

「フェルト」とは、まさにフェルト生地のような小さな「布切れ」のこと。

針にこれがついていると、縫い込んだところに「フタ」をするように布切れが縫い込まれる。

柔らかい組織を縫合するときは、糸で縫うだけでは裂けてしまうため、こういう保護剤を当てることが多い。

豆腐を細い糸で縫うことを想像してほしい。

ぎゅっと縛れば、かえって豆腐が潰れてしまうことがイメージできるだろう。

 

ちなみによく似たシーンが3rdシーズン第3話にある。

ダメージコントロール手術の場面である。

転落外傷で肝破裂の患者さんの手術中に藍沢(山下智久)が、

「ひとまず大きく肝縫合する」

と言うと緋山(戸田恵梨香)が、

「2-0プロリン両端針でたくさんちょうだい!」

さらに藍沢が、

「フェルトつけて!」

全く同じ展開だ。

 

ちなみに「両端針(りょうたんしん)」とは、糸の両端に針がついている糸のこと。

なぜ「両端針」が良いのか?

というのは、もはや外科医以外は医師でも知らないし、動画でないと説明しにくいくらいなので、ここではこのくらいにしておこう。

 

リアルで迫力はあるが、現場での二次災害から全体的に物悲しく暗い展開の第9話。

いよいよあと2話で1st SEASONも終わりである。

引き続き解説をお楽しみに!


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