食後の辛い胸焼け、正しい治し方と予防法、原因となる怖い病気

「胸焼け」は、誰しもが経験したことのある症状でしょう。

医学的に正しい対処法や予防法は決まっています

しかし、こういう胃腸に関する症状については、間違った情報がネットに出回りやすい傾向があります。

「ストレスが原因だ」と言う人が必ずいたり(ストレスが原因で胸焼けや胃潰瘍が起こることは極めてまれです)、ツボやサプリで治ると言う人もいます(これらでは決して胸焼けは治りません)。

 

そこで今回は、胸焼けの原因となる病気や正しい対処法について解説します。

ガイドラインや信頼性の高い論文を根拠に、医学的に正確な情報しか書きませんのでご安心ください。

 

胸焼けとはどんな症状?

胸焼けは、胃酸が胃から食道に逆流することによって起こる不快な症状のことです。

実際には胃酸に限らず、食べたものや水の逆流でも胸焼けの症状は起こります

(「酸性であること」が必須なのではありません)

胸焼けは「呑酸(どんさん)」と表現されることもあります。

「呑酸」とは、げっぷの時のように「酸っぱいものが上がってくる感覚」のことです。

 

食道から胃のさかい目には「噴門」と呼ばれる門がついており、括約筋という筋肉で締め付けられています。

食べ物が食道から降りてきた時にしか開かず、本来胃の内容物は簡単には逆流できないようになっています

では、なぜ胸焼けが起こるのでしょうか?

 

なぜ胸焼けは起こる?

胸焼けの原因は、

胃から上方向への圧力が高くなる

括約筋の締め付けが弱くなる

のどちらかです。

これらがどういう時に起こるかを考えれば、胸焼けの治し方や予防法は自ずとわかってきます。

 

胸焼けの治し方・対処法

上に挙げた2つの原因に分けて考えてみましょう。

 

胃からの圧力が高くなるのを防ぐ

暴飲暴食をやめる

当たり前ですが、食べ過ぎ、飲み過ぎは胸焼けの原因です。

当然、胃がパンパンに張るほど飲み食いをすれば、胃から食道側への圧は高まります。

括約筋での締め付けでは抑えきれず、胃の内容物が逆流してしまいます。

1回の食事量を少なめにし、回数を分けて、規則正しい食生活を心がけましょう。

 

肥満を解消する

太っている方は、日頃から腹圧が高いため、胃からの逆流が起こりやすくなっています。

肥満は、後述する逆流性食道炎のリスクです。

ダイエットをしましょう。

 

食後の姿勢に注意する

食後にすぐに横になっていると、胃から上方向へ食べたものや胃酸が流れ込みやすくなります。

食後はすぐに横にならず座っているようにすること

可能な限り夕食から就寝までの間を空けるようにすること

が胸焼けの予防につながります。

やむを得ず横になる時は、枕などを使って上半身を20〜30度程度高くしましょう

 

腹圧がかからないようにする

コルセットベルトで腹圧をかけすぎていると、胃からの逆流が悪化します。

また、背中が曲がった猫背の姿勢も、腹圧を上げる要因になります。

コルセットやベルトを緩め、姿勢を正し、腹圧がなるべくかからないようにすることが大切です

また、便秘も腹圧を上げる要因になります。

食物繊維を多く摂る、便秘薬を使う、などで便秘を解消しましょう。

妊娠中も腹圧が高くなるため、胸焼けが起こりやすくなっています。

 

括約筋がゆるむのを防ぐ

脂っこいものは食べ過ぎない

脂肪分を多く含む食べ物を食べると、コレシストキニンというホルモンが分泌されます。

コレシストキニンは胆のうを収縮させ、胆のうにたまった胆汁という消化液を分泌させます

この消化液が脂肪の分解に働く、という仕組みです。

ところが、コレシストキニンには食道と胃の間の括約筋をゆるめる働きもあります

このせいで、胃から食道へ逆流しやすくなるわけです。

脂っこいものは食べ過ぎないようにすることで胸焼けを予防できます。

 

内服薬に注意

狭心症の薬や高血圧の薬、喘息の薬を飲んでいる方は注意してください。

これらの薬には、括約筋をゆるめる作用を持つものがあり、逆流の原因となっていることがあります。

処方している医師に相談しましょう。

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胸焼けに効果のない方法

民間療法のように行われていても効果はあまり期待できない、という対処法を挙げます。

 

牛乳を飲む

牛乳は胃の粘膜を保護する

胃酸を中和する

低脂肪や無脂肪牛乳は胃に良い

といった言い伝えがあるようですが、医学的根拠は全くありません

逆に、牛乳は胃粘膜に対しては逆効果だという根拠ならあります

たとえば、21440人の男女を対象に行われた研究では、

「牛乳を多く飲む人に潰瘍(かいよう)が多かった」

という結果が出ています(※)。

しかも、スキムミルク(低脂肪乳や無脂肪乳)であろうとなかろうと、結果は同じでした

もちろん、「胃に症状がある人が、それを緩和するために牛乳を飲んでいた」という可能性もあるので、この研究結果から「牛乳が胃に悪い」とするのは短絡的です。

しかし、少なくとも胃粘膜の保護や胃酸の中和といった良い作用を牛乳に期待すべきではありません

また、前述の通り酸以外の逆流でも胸焼けは起こりますので、「中和」を期待しても意味がありません。

(そもそも牛乳は中性ですので、酸性・アルカリ性を考えるなら水を飲んでいるのと同じです)

 

ただし、水分摂取によって、逆流した胃酸や胃の内容物を洗い流すことはできます。

その意味では、牛乳に限らず飲み物を飲むこと自体が胸焼けを軽くする可能性はあります

 

ちなみに、

牛乳を飲むと胃粘膜が保護されてお酒に酔いにくい

アルコールから守られる

という俗説もありますね。

これも医学的根拠は全くありませんので、医師の間で信じている人はいないでしょう。

アルコールは胃から急速に吸収されますので、たとえ牛乳が表面に「付着」していたとしても、全くもって防御効果はありえません

 

ガムを噛む

ガムを噛むと、唾液が出てそれが食道を洗い流す、という説があります。

確かに唾液は多く分泌されますが、洗い流したいなら水を飲むべきでしょう。

唾液に含まれる消化酵素に効果がある、という説もあるそうですが、唾液に含まれるアミラーゼデンプンを分解する作用があるだけです。

食道や胃粘膜を保護する働きはありません。

 

大根を食べる

大根おろしやかぶが胸焼けに効く、という俗説もあります。

大根に含まれるジアスターゼという酵素に効果があるのだとか。

「ジアスターゼ」はそもそも死語で、正確な名称は「アミラーゼ」です。

アミラーゼの働きは前述の通りで、胸焼けに効果は期待できません

 

さて、上述のような対処法を行なっても胸焼けが改善しない、という方は要注意です。

次に挙げる疾患である可能性があり、薬での治療が必要です。

慢性的な辛い胸焼けがある方は、市販薬漢方薬を試す前に病院に行きましょう。

 

胸焼けの原因となる病気

慢性的に胸焼けを繰り返している方は、怖い病気が隠れている可能性があります。

上に書いた対処法を試したり、市販薬で対応したりする前に病院に行って検査を受けましょう。

原因となる病気には、以下のようなものがあります。

 

胃食道逆流症(逆流性食道炎)

慢性的に胃から食道への逆流を繰り返し、胸焼けや呑酸などのひどい症状が続く病気です。

病院で処方されるPPI(プロトンポンプ阻害薬)と呼ばれる薬で80〜90%が治癒します。

胸焼けに長期間悩んでいる、という方は病院に行きましょう

市販薬や漢方薬などでは決して治りませんので注意してください。

ちなみに私自身も軽い胃食道逆流症があり、PPIを内服しています。

詳しくは以下の記事をご参照下さい。

 

消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)

胃潰瘍、十二指腸潰瘍を合わせて消化性潰瘍と呼びます。

十二指腸潰瘍の人は胃酸過多であることが多く、胃酸の逆流が増えている可能性があります。

消化性潰瘍による一般的な症状(胃もたれや胃痛)を「胸焼け」と捉えている人もいます

 

消化性潰瘍の原因は、95%以上がピロリ菌か痛み止め(ロキソニンやボルタレンなど)のどちらかです。

よって治療はピロリ菌の除菌か、痛み止めの中止(または変更)です。

ピロリ菌が原因の方は、除菌だけで7割以上が治癒します。

治癒しなかった方にはPPIを内服してもらいます。

痛み止め(鎮痛薬)が原因の方は、痛み止めの中止だけでほとんどが治癒します。

(痛み止めが胃を荒らす、というのは誰もが知っていますね)

痛み止めを中止できない方はやはりPPIで治療します。

 

ちなみに消化性潰瘍の原因はストレスではありません(ストレスだけで起こることは極めてまれです)。

知らなかった、という方は以下の記事も参照してください。

 

胃がん

胃がんが胸焼け症状を引き起こしていることもあります。

胃がんは初期の段階では全く症状はありません。

よって症状があるなら、それは比較的進行したがんがあることを意味します

慢性的に胸焼けが続く方は、必ず病院に行って検査を受けましょう。

こちらの記事もご参照下さい。

これって胃がん?精密検査が必要な3つの症状

 

食道裂孔ヘルニア

胃が横隔膜のすき間を通って胸の空間へはみ出してしまう病気のことです。

胃と食道のさかい目をしめつける括約筋の機能が弱まってしまい、胸焼けの原因になっていることがあります。

胃カメラ(内視鏡)やレントゲンで診断し、必要なら手術で治療します。

これについても逆流性食道炎についての記事で書いています。

 

なお、胸焼けだけでなく、下痢吐き気もある、熱が出ている、というケースでは、急性胃腸炎を考えます。

上述したような対応では効果はありません。

以下の記事で、ノロウイルスに限らず胃腸炎の一般的な対応について書いていますので、ご参照下さい。

(参考文献)
J Epidemiol Community Health. 1994 Apr;48(2):156-60.
胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2015(改定第2版)/消化器病学会

3 Comments

ピスタチオ

先日、初めて胃カメラ検査を受けました。
その時に、他は問題なかったのですが、一点だけ、食道から胃のさかい目の噴門の筋肉が少し緩くなっている、と言われてしまいました。

特に胸焼けなどの症状はないです、と答えたのですが、一度緩んでしまった括約筋はもう元には戻らないのでしょうか?

加齢もあるのかもしれませんが、私は昔からよく食べる方なので(今はダイエットのため暴食は控えています)、そのせいなのかな、と残念に思っています。

しかし、まさか腹筋のように鍛えるものでもないですし、これ以上緩ませないように、気をつけて行くしかないのでしょうか。。

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けいゆう

ピスタチオさん
括約筋が緩い人は結構いますね。
食べ過ぎが原因ではなく、軽い食道裂孔ヘルニアでしょうね(年齢とともに起こってくる人はいます)。
症状がなく食道の炎症もなければ治療の対象にはなりませんし、基本は、あまり気にする必要ないですよ、と言って放置してもらっています。
症状があれば別ですが・・・

返信する
ピスタチオ

まずは何か症状が出ているかどうか、ですね。

あまり気にせず、でも暴食はしないようひ過ごしたいと思います。ありがとうございました!

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