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ブラックペアン 全話あらすじ&感想・解説総まとめ(ネタバレ)

「ブラックペアン」は2018年4月〜6月に放送され、平均視聴率は14%以上と大変人気のドラマになりました。

手術シーンの空気感にリアリティが追求され、「治験コーディネーター」「インパクトファクター」など、これまでの医療ドラマであまり扱われなかった目新しいテーマも登場しました。

リアルな描写や俳優たちの高い演技力が高い評価を受けた一方で、扱った新しい素材が各方面から批判を集めたことでも注目を浴びました

 

さて、今回は恒例の解説記事総まとめです。

未読の記事がある方はぜひ読んでいただきながら、ブラックペアンをゆっくり振り返ってみましょう。

前半は各話解説記事、後半はまとめ記事を載せています。

 

各話解説記事

第1話

心臓外科医の佐伯(内野聖陽)は、「佐伯式」と呼ばれる独自の僧帽弁手術を得意とする東城大病院の外科教授

その佐伯をも凌ぐ腕を持ちながら、科内のアウトローとして煙たがられる存在、渡海(二宮和也)。

ライバルである帝華大外科教授、西崎より送られてきた刺客であり、外科領域に新たなテクノロジーを持ち込み、手術を簡便にすることを目指す外科医、高階(小泉孝太郎)。

彼ら3者と、大学同士の抗争に揉まれながら有能な外科医を目指し黙々と努力する研修医、世良(竹内涼真)。

この4人の外科医を中心に物語は始まります。

 

原作は、小説「ブラックペアン1988」。

医師でもある海堂尊氏の実際の体験をもとに書かれた小説で、非常にリアルな描写が特徴の作品です。

テーマこそ消化器外科から心臓外科に変わりましたが、登場人物や設定は原作通り。

しかしその硬派な原作に比べると、ドラマは驚くほどにエンターテイメント寄りに変わっていました。

 

医師同士の権力闘争を強調したり、だだっ広い講堂でありえないほど多くの外科医が会議をするなど、ドクターXを彷彿とさせるほど。

この意外な「トンデモ度」について解説するとともに、高階が持ち込んだ新たな手術器具「スナイプ」が実際には使えない理由や、インパクトファクターと医学雑誌の実際の姿について書きました。

 

第2話

第1話より異様な雰囲気を放っていたのが「治験コーディネーター」の木下(加藤綾子)でした。

治験コーディネーターは、現場では「臨床研究コーディネーター」「CRC」とも呼ばれ、臨床試験(治験)にはなくてはならない病院勤務の医療スタッフ

ドラマでは、治験コーディネーターが患者さんに大金を渡して試験参加を促したり、医師を高級レストランで接待するなど、実際とは大きく乖離した描写がありました

 

治験コーディネーターがあまり知られていない職業であるため、視聴者に誤解を与える恐れがあること、現実の脚色としてはあまりに倫理性を欠いていたことで、医療団体から抗議が殺到することになります。

解説記事では、治験コーディネーターの実際の姿について解説し、この描写が「誇張ですらない」ことを強調しました。

 

患者さんに誤解を与えると良くないという思いと、医師からの大人げない指摘でドラマの楽しみを奪いたくないという相反する思いから、

「野球選手がドラマに登場すると聞いて見てみたらパティシエだった」

と、その非現実性をクスッと笑える表現でたとえてみたところ、日本臨床薬理学会が表明するFacebookの抗議文にも引用していただき、たくさんの方に読まれることとなりました。

 

第3話

原作ファンにとって不満が溜まっていたのが高階の扱いでした。

原作の高階は、佐伯、渡海と並ぶ腕の持ち主で、東城大の将来を担うことを期待された人材でした(シリーズではのちの院長という設定です)。

 

ところがドラマでは、「外科の未来を変える」とセリフこそ勢いづいているものの、手術では毎回つまずいて渡海に助けてもらう、という少し情けない役回りでした。

患者思いの人格者と思えるシーンもあれば、「論文は医者の全てなんだ!」など、学術活動への偏向とも取れるセリフがあるなど、ややキャラ設定にブレがありました

 

また高階が持ち込んだ新しい手術機器「スナイプ」は、安全第一で行われるべき治験において、毎回厳しい症例に使われていました

解説記事では、この治験の正しいあり方や、チームとして機能していない東城大外科の体制に苦言を呈してみました。

 

第4話

毎回ギリギリの症例で使用されるせいか、なかなかその威力を発揮できない高階の秘密兵器「スナイプ」。

そもそも治験に適用するには無理のある症例ばかりが選ばれるからなのですが、今度は「成功率5%」という厳しい患者さんが選ばれた上に、スナイプが改造して使用されてしまいます

「渡海の名案!」と片付けても良いのですが、治験は非常に厳しい条件下で行われなければなりません。

面白いけれどちょっと「悪ふざけが過ぎる」筋書きを、外科医の視点から解説しました。

 

また、「論文の最高責任者のところに誰の名前が載るか」という点で権力闘争を広げた両大学教授たち。

しかし、本来論文の責任著者は論文執筆の指導者であり、内容を知らないどころか「自分の名前が載るかどうかも分からない」というのは、さすがに設定に無理がありました

論文と責任著者のあり方についても解説を加えました。

 

第5話

スナイプの治験が終了し、次に現れたのが手術支援ロボット「ダーウィン」でした。

驚くべきは、ドラマ史上初めて実際の手術支援ロボット「ダヴィンチ」が使われたこと

見た目の迫力やその操作の仕方などは、リアリティに溢れていました。

ところが、いつものように起こる術中のトラブルは、実際には「トラブルですらない」普通の現象で、知っていると拍子抜けしてしまう展開。

また手術支援ロボットは、実際には多種類の疾患にすでに保険が通っており、全国の病院で普通に使用されている点など、あまり知られていないロボット手術の実際を詳しく解説しました。

 

第6話

フィクションとしては十分面白いものの、あまりに正確性を欠いた演出は患者さんに誤解を与えるため避けてほしい、というのは医師としての本音。

ブラックペアンのストーリーが不安になるほどトンデモ化したのが第6話でした。

 

渡海が手術中に搬送された渡海の母親が、渡海に知らされずに勝手に手術され、しかもそれが不十分な治療となって再手術が必要になる

自分の家族を手術して失敗が続いたのが原因で、家族の手術はしてはならないというルールがある。

血液製剤が足りない時に、他人や家族の血液を採取して輸血する。

 

もしかすると実情を知らなければ楽しめたかもしれないのですが、実際とは大きく乖離した描写には、大昔の医療ドラマを思い出すほどでした。

特に手術中に血液製剤が足りない場面で、高階がフラフラになりながら自分の血を必死で抜いているシーンは、「笑ってはいけないのに笑ってしまう」名シーンでした。

輸血の仕組みは非常に大切なポイントであるため、この回で詳しく解説しました。

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第7話

トンデモだった第6話から一転、第7話はブラックペアン全編を通して「最も見応えがあった」と確信できる回でした。

治験コーディネーターの木下はもともとオペ室看護師だったこと、医療過誤の罪を着せられ、病院を追われたことが明らかになります。

このエピソードが、かつて医療過誤の責任を問われ、東城大を追われた父の恨みを晴らしたい渡海の思いとオーバーラップする伏線となります。

 

一方で、手術シーンでは渡海役の二宮さんを始めとして、技術面でのリアリティの描写が素晴らしい点について触れました。

また、渡海が帝華大の手術室でオペを行うことになりましたが、この難しさや、「渡海がいかに敏腕か」ということを解説しました。

 

第8話

医療ドラマでは、「VIP患者の手術中のトラブル」は定番。

第8話では、様々なトラブルによりVIPの手術中に術者が4回変わるという異例の展開でした。

この際のチームの入れ替えの奇妙さや、現実とは乖離したオペ室看護師の描写、オペ看と医師との関わりについて解説しました。

 

また、第8話で出てきた「ライブ手術」も、外科系医療ドラマでは定番です。

こちらは実際に行われることがあるということを、医療ドラマがリアルかそうでないかの判断が実は難しい一例として書きました。

 

第9話

東城大では、開発されたばかりの国産型手術支援ロボット「カエサル」の治験が始まっていました。

例によって手術中の大ピンチを渡海が救う展開には違いないのですが、第9話では「ロボットの遠隔操作」という目新しいシーンが見られました。

渡海が手術室から離れた位置からロボットを巧みに操作するシーンはエキサイティングでありながら、依然として「気の毒すぎる」高階の描写にも触れつつ、ロボットの遠隔操作が実際には難しい理由を書きました。

 

一方、難しい症例の治療法を探すため、総力戦で論文を検索する外科医たち。

現実には論文の検索があまりに簡単であることや、実際の臨床現場でどんな風に論文を利用すべきかについて解説しました。

 

最終話

ブラックペアン最終回では、ついに渡海と佐伯の過去の因縁に決着がつきます。

医療過誤を疑われた渡海の父は、実は佐伯の罪を知った上でそれを受け入れていたこと、

ペアンを胸に残したのは「置き忘れ」ではなく、手術時の止血のためにはやむを得なかったことが明らかになります。

 

渡海は、研修医の世良に「お前はいい医者になれよ」という言葉を残し、やり場のない怒りを抱えたまま東城大を去りました

解説記事では、

そもそもペアンを胸に残したのは「医療過誤」だったのか?

実際にはどういう処置を行うべきだったのか?

という点で真面目に分析してみました。

 

そして最後まで誰とも心を通わせなかった渡海、佐伯、高階、世良ら東城大の外科医たち。

ブラックペアンに伏流する物寂しい雰囲気は、一体何によるものなのか?

独自の視点で分析してみました。

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まとめ記事

各話の解説記事とは別に、ブラックペアンで取り上げられたテーマについても、深く掘り下げて解説してみました。

特にブラックペアンでは、「治験」や「医学雑誌」「インパクトファクター」といった、少し目新しいテーマが取り上げられました。

これらがどのくらい現実に即しているのかについても解説しています。

 

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原作の解説記事

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