人気シリーズ「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」の第5弾が、2017年10月から12月に放送されました。
他の医療ドラマに比べるとかなりコメディ色が強く、解説のニーズがあるのかどうか疑問でしたが、結局全話解説を行いました。
こういうリアリティがそれほどない医療ドラマだと、どこまでがリアルで、どこからはフィクションなのかが分からない、という方も多いようです。
そこで、実際にはどのくらいリアルなのか、という観点から病気や手術に関する解説を行いました。
今回は関連記事を第1話から順にあらすじとともに紹介します。
わかりやすく解説していますので、是非お読みください。
目次
第1話「復活!!!! 失敗しないハケンの女 世界横断オペ2000万」
非常にまれな心臓の冠動脈瘤と心臓腫瘍が登場。
いずれも大門が見事に手術で治してしまいました。
第1話では院長として志村(大地真央)が赴任していましたが、スキャンダルが発覚し、あっという間に失脚。
結局蛭間(西田敏行)が院長の座に返り咲き、東帝大病院の腐敗は進んでいくことになりました。
また謎のロボット手術が登場。
アメリカ人外科医が遠隔操作して手術を行うという太平洋横断テレサージェリーが披露されます。
実際ロボット手術は最近話題なので、多くの方が「あれが本当なのか?」と検索されたようでした。
このちょっと「おふざけ」が過ぎるロボットの描写に突っ込みを入れておきました。
ドクターX 5期 第1話 医師が解説|心タンポナーデと冠動脈瘤?ロボット遠隔手術は可能?
第2話「VSゆとり院内盗撮!? 過保護な患者の秘密」
またしてもまれな病気「胆のう癌肉腫」が登場します。
これに大門は肝膵十二指腸同時切除という大手術を行い、この世界的な成果を記者会見で発表するという展開でした。
実際にはこの手術は「普通に行われる手術」です。
また手術中の展開も、さすがに「トンデモ」感があったので、実際はどのように手術しているかを解説してみました。
一方、冒頭では胃がんに対して矛盾のない完璧な手術を行っていたので、こちらも解説しました。
ドクターX 5期 第2話感想|胆のう癌肉腫、肝膵十二指腸同時切除はリアルか?
第3話「VSキレる教授!? セカンドオピニオン失敗しないので」
当初切除不能とされた進行肺癌を持つ患者さん。
院長の蛭間から「3タカシ」と言われ可愛がられていた3人の副部長の一人、猪又(陣内孝則)が化学療法を行っていました。
ところが大門はこれを、原発性肺癌ではなく甲状腺癌の肺転移であることを見抜きます。
実は、原発巣より転移巣の方が大きく目立つ「オカルト癌」。
大門による見事な診断力と技術で患者は救われました。
解説記事では、この流れが医学的にも矛盾がなく面白い反面、猪又を誤診だと責めるにはあまりにも無理があることを指摘しました。
またドクターXによく出てくる手術シーンについて、リアルっぽくて実はリアルなじゃない場面についての解説記事も作りました。
ドクターX 5期 第3話解説|甲状腺オカルト癌を見逃した猪又が悪くない理由
ドクターX 5期 第3話|リアルじゃない手術シーンに外科医が感じる不自然さ
第4話「外科医を育てる超VIP患者の秘密!?」
若い女性患者の巨大な肝細胞癌。
肝臓は切除できる限界が決まっており、腫瘍が大きすぎるため手術は不可能と判断されていました。
ところが、この癌に対して大門が奇策を繰り出します。
一度目は癌を切除せずに門脈を縛って肝臓を大きく成長させ、二度目に癌を切除するという二段階手術、ALPPS(アルプス)です。
こちらも手術としては筋が通っておりリアリティがあること、肝細胞癌という設定には無理があることなどを真面目に分析してみました。
また、フリーランス外科医が実在しない理由や、教授陣は臨床能力が低い、という設定がどのくらいリアルかについても記事にしました。
ドクターX 5期 第4話感想|肝臓癌のALPPS(アルプス)はどこまでリアルか?
ドクターX 5期 医師が解説|フリーランス外科医はなぜ実在しないのか?
第5話「診断1秒人工知能VS失敗しない野生の勘!?」
日本将棋界屈指の若手棋士が、脳腫瘍の疑いで倒れます。
しかし、東帝大病院に導入されたばかりの最先端AIが、脳に膿がたまる「脳膿瘍」であると診断。
東帝大上層部は脳膿瘍として手術をしようとしますが、大門は「何かがおかしい」と診断結果を疑問視します。
そして、患者の旅行歴や嗜好、わずかな皮膚の所見から、診断はまれな寄生虫感染症であることを見抜き、手術で取り除くことに成功。
AIを超える見事な診断力を見せつけました。
この大門のファインプレーがどのくらいリアルなのか、解説してみました。
ドクターX 5期第5話 感想|脳膿瘍と有鉤嚢虫症を見分けた大門はすごいのか?
第6話「おしどり夫婦の緊急Wオペ!? 私麻酔もできるので」
大門の行きつけの中華料理屋の店主が膵臓の腫瘍で倒れます。
病名は、IPMN(膵管内乳頭状粘液性腫瘍)。
腫瘍を取りきるには、膵全摘、つまり膵臓を全て摘出することが必要と主張する大門に、猪又は真っ向から反対します。
しかし猪又が行おうとした「膵頭十二指腸切除」という術式は、癌を取り残す危険性がある術式でした。
大門は途中で手術に無理やり割り込み、執刀を奪ったのち、膵臓を少しでも残せる「中央区域温存膵切除」という奇策を繰り出しました。
このウルトラCを可能にしたのが、術中迅速病理診断。
決してまれとはいえないIPMNの手術と、この迅速診断の仕組み、大門の思考過程を図解付きで解説しました。
ドクターX5期 第6話解説|迅速結果が決めた膵臓IPMNのトリッキー手術
第7話「日米女医対決!! オペ室の中心で愛を叫ぶ」
キンちゃんこと原守(鈴木浩介)は、ロシアの病院勤務時代にアメリカ人外科医ナナーシャと交際していました。
そのナナーシャが突然、原に会うために日本にやってきます。
切除不能の脳腫瘍を患い、予後が長くないことを悟ったからでした。
これに大門が果敢に挑みます。
腫瘍は運動野のすぐ近くにあり、腫瘍が摘出できても右腕の麻痺が残ればナナーシャは外科医生命を失う。
そこで大門は、手術中に患者さんを起こして手の動きを確認しながら切除範囲を決める「覚醒下手術」を行います。
結果的にナナーシャは麻痺が起こることなく無事に手術を乗り切りました。
この手術がリアルさや、少し不自然な設定について解説しました。
ドクターX 5期第7話 感想|脳外科覚醒下手術はどこまでリアルなのか?
第8話「命懸けの内部告発!? 最強黒幕の秘密…」
ステージ4の肝外発育型肝細胞癌の患者さんが登場します。
胆のう癌も合併し、これらが融合している「衝突癌」と呼ばれる状態でした。
これに挑んだのは、日本医師倶楽部会長である権力者内神田(草刈正雄)の息子であり若手外科医の西山(永山絢斗)。
しかし手術中に大出血し、収集がつかなくなります。
ここで大門が執刀を交代。
「谷から壁にする」という名言で西山を指導し、困難な肝切除をやり遂げました。
未熟ゆえ手術を完遂できなかった西山を厳しく叱責した大門。
手術の流れと、その叱責に感じた違和感を解説しました。
ドクターX 5期 第8話 感想|私が教えを請いたい大門の肝臓衝突癌手術
第9話「最終章〜失敗しないハケンの女倒れる…!?」
麻酔科医、城之内(内田有紀)の娘と同じバレエ教室に通い、選考会を間近に控えた少女が、足の舟状骨骨折で大門の元を訪れます。
治療には2回の手術が必要で、治療期間は半年。
選考会出場は絶望的でしたが、大門は患者さん自身の骨から作る「骨ネジ」を用いて行う骨移植を提案。
これがうまくいけば手術は1回で済み選考会にも出られる・・・。
町工場で機械を使った細かい作業を得意としている少女の祖父にその役割を依頼します。
祖父は手術室に入り、その技術によって見事な骨ネジを作り上げ、それを使って大門は無事手術を成功させました。
整形外科手術に求められる高度な清潔さや、こうした新治療が実際には思いつきで導入できない現実を解説しました。
ドクターX 5期 第9話解説|舟状骨骨折が医師にとって鬼門である理由
最終回「さらば大門未知子!!!!衝撃のラストオペは…35億!?」
日本医師倶楽部会長がステージ4の食道がんにかかっていることが発覚します。
大門しか手術ができない、非常に進行した状態でした。
ところが大門も、進行した後腹膜肉腫を患っていることが判明します。
自分を虐げてきた内神田にも、痛みを押して全力に手術に挑む大門に、周囲の外科医たちは感動しました。
内神田の手術を成功させた大門は、その後大門を尊敬しその技術を盗んできた若手外科医の西山に自分の手術をさせることを決意。
西山は、大門さながらに後腹膜肉腫の切除を成功させました。
消化器外科医が手術する、食道がんと後腹膜肉腫。
実際このような状況で手術することは可能なのか?
実際にはどういう治療をすべきだったのか?
真面目に解説してみました。