韓国ドラマのリメイクとなった医療ドラマ「グッドドクター」は、2018年7月〜9月に放送され、全話二桁視聴率と非常に人気でした。
自閉症を持つ主人公の若手医師を中心に、小児外科を題材としたリアルなストーリーが魅力でした。
このブログでも、全話に渡って医学的な解説を行うとともに、医師として感じたことをまとめてきました。
この記事は、これまでの恒例、全話の振り返りです。
目次ページとしてご利用いただき、また未読の記事があればぜひ読んでいただきたいと思います。
目次
第1話「最高にピュアな小児外科医誕生!」
東郷記念病院に新たにレジデントとして赴任した新堂湊(山﨑賢人)。
湊は、自閉スペクトラム症を持ち、コミュニケーションが苦手な一方、類まれなる記憶力や技術を持つ医師という設定です。
冒頭から、病院に向かう途中で緊張性気胸を見抜いてその場で治療したり、病院に搬送後は身体診察のみで心タンポナーデを見抜いたり、とその天才性を見せつけます。
またその後も、患児の絞扼性イレウスを指摘するなど、優秀さを見せるものの、患者さんと会話する中で不信感を持たれ、トラブルの火種となってしまいます。
記事では、湊が見抜いたこれらの疾患を解説し、湊の天才性の描写がリアルかどうかについて書きました。
なお、「レジデント」のような若手医師の呼び名についてはこちらの記事で解説しています。
第2話「女子高生が未熟児を緊急出産!小さな命を守りたい…」
第2話では、新生児壊死性腸炎という疾患が登場しました。
非常に危険な状態の患児に対し、腕のいい外科医の高山(藤木直人)を始め、小児外科チームが立ち向かいます。
壊死性腸炎は、妊娠32週以下の早産児や、出生時の体重が1,500グラム未満の赤ちゃんに起こりやすいとされる疾患。
今回は腸管壊死から穿孔(穴が開く)、と重篤な状態に陥っており、手術も複雑でした。
記事では、この手術の流れを解説するとともに、患者とうまく接することのできない湊について、医師の視点で考えを書きました。
第3話「病院をたらい回しされた少女!救いたいだけなのに…」
第1話でも登場した絞扼性イレウスが再び登場。
患児の搬送先がなかなか見つからず、敗血症性ショックを起こすまで重篤化してしまいます。
小児外科医が治療にあたりますが、結局救えず亡くなってしまいました。
誤嚥性肺炎を起こしたり、手術中に腸間膜の動脈瘤が破裂して心停止したりなど、少し難しかった病態を分かりやすく解説しました。
また、治療の過程で患児を救えなかった外科医たちが、家族に訴訟を起こされる、という展開に。
なぜ訴訟を起こされたのか、どうすればこれを防げたのかを、外科医の立場から解説してみました。
第4話「身元不明の少女を湊が初担当!?少女の悲しい秘密」
第4話では、尿膜管遺残という疾患が登場します。
あまり知られていませんが、成人の2%と決してまれとは言えない頻度で起こるこの疾患について、詳しく解説しました。
また、今回は尿膜管遺残が原因で膿瘍(膿のかたまり)を形成し、これが破裂して重篤な腹膜炎になってしまいます。
受診が遅れた原因は、母親のネグレクトでした。
緊急手術となりますが、手術中に、今度はメッケル憩室から出血。
これらの病態を湊が正確に見抜いた結果、手術は無事うまくいったのでした。
この治療の流れと医学的なリアリティについて解説しました。
第5話「天才少年の歌声が病魔に! 湊、小児外科医をクビ…?」
第5話で湊が担当したのは、有名なボーイソプラノの少年でした。
「下咽頭梨状窩瘻(かいんとうりじょうかろう)」という先天性疾患を持っており、それが原因で繰り返し首に炎症を起こしています。
手術が必要でしたが、スパルタ指導者である少年の父が反対。
手術によって声を失うリスクがあったからでした。
結果的には、湊が少年の悩みに寄り添い、本音を聞き出し、父親の気持ちを変えることに成功します。
記事では、下咽頭梨状窩瘻という病気と、手術でなぜ声を失うリスクがあるのかについて医学的に解説しました。
加えて、当初患者さんとのコミュニケーションが苦手だった湊が徐々に成長していく姿を見て、私の率直な考えを書きました。
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第6話「私の赤ちゃんを救って…。湊が挑む!母体か子どもか」
小児外科医チームは、産婦人科からリンパ管腫の胎児に関して相談を受けます。
巨大なリンパ管腫が気道を邪魔し、出生後に呼吸に障害が出るリスクがあることから、「EXIT」という手術が提案されたのでした。
EXITとは、分娩時に臍帯を切り離さず血行を確保したまま胎児に処置を行うことです。
ところが手術時に、リンパ管腫が想定以上に大きいことが判明。
気管挿管も気管切開も難しい、という状況に陥ります。
母体リスクを考え、胎児を諦めるべきなのか。
ギリギリの状況で、エコーを使って窮地を救うアイデアを提案したのは湊でした。
記事では、手術の流れを解説するとともに、彼の提案が理にかなったものであることを書きました。
第7話「元小児外科患者が再入院!結婚直前の2人に悲劇が…」
かつて東郷記念病院で卵巣嚢腫の摘出手術を受けた患児が救急搬送されます。
診断は、抗NMDA受容体脳炎という珍しい疾患でした。
残ったもう一方の卵巣に奇形腫ができ、これと関連して起こる自己免疫性の脳炎です。
こうした疾患が起こる経緯が分かりにくかったため、記事で分かりやすく解説を加えました。
また、卵巣が一方しかない患者さんに対し、できるだけ卵巣を温存したい、という意図で行われたのが術中迅速病理診断です。
手術の行く末を占うキーとなった重要なこの検査についても、現実にはどうしているか、という観点で詳しく解説しました。
第8話「大病を患う幼い命…家族が抱えるそれぞれの想い…」
肝臓にできる珍しい腫瘍、悪性ラブドイド腫瘍が登場します。
患児のこの病気を治療するため、病院の近くまで引越してきた家族。
少年を全力で看病していた母親は、疲れがたたってふらつき転倒、頭を怪我します。
また、少年の兄も転校を余儀なくされるなど、一人の家族の病気が発端となって家族内に軋轢が生まれる様子が描かれました。
また、巨大な肝臓の腫瘍が入院中に破裂。
緊急手術が必要となります。
主治医の高山は別の手術に入っていたため、執刀を任されたのは間宮でした。
間宮が見事やり遂げたこの手術の流れや、小児に関わらず、治療に家族の協力が欠かせないことの大切さを解説しました。
第9話「何回手術すれば気が済むの?すれ違う姉妹の想いに湊は…」
バスケの試合中の頭部外傷により水頭症となった高校生。
東郷記念病院の脳外科で、これに対する手術が検討されます。
通常なら脳内に過剰に溜まった脳脊髄液をお腹の中(腹腔内)に流す手術を行うべきなのですが、少年は腹膜炎の経験がありました。
腹腔内の広範囲の癒着により、開腹手術の難易度が格段に上がることが予想されます。
結局、瀬戸(上野樹里)が何とか上腹部にスペースを見つけ、手術はうまくいくかに見えましたが、今度は手術中に呼吸状態が悪化。
原因は、肺塞栓症(エコノミークラス症候群)でした。
結果的には、肺塞栓の治療も同時に行い、予定通りの手術を終えます。
記事では、この手術の流れのリアルな部分と、少し不自然だった部分を解説してみました。
最終話「すべての子供が、大人になれますように。小さな命を繋ぐための最後の闘い」
最終話では、脳死肝移植と生体小腸移植の同時手術が描かれました。
手術を受けたのは、東郷記念病院に以前から短腸症候群で入院していた女児でした。
肝移植は、東郷記念病院に偶然搬送された溺水の少女が、小腸移植は女児の姉がドナーに選ばれました。
ところが、前例のない非常に困難な手術になるため、保身を第一に考える病院の上層部から反対意見が出ます。
結局は、湊たち小児外科医の強い思いが、反対勢力だった副院長や理事長に伝わり、手術が無事行われました。
記事では、こうした手術のリアリティや、脳死移植、肝移植手術がどのように行われているかについて、詳しく解説しました。
また、グッドドクター全話を通して描かれたメッセージについて、医師の立場から感想を述べました。