「アンナチュラル」は2018年1月〜3月に放送され、平均視聴率は11.1%と人気のドラマになりました。
このブログでは、全話に渡って医学的に重要なポイントを医師の視点から徹底解説してきました。
解説記事全13本の総閲覧数(PV数)は13万PVを超え、コードブルー3rd SEASON(2ヶ月で40万PV超)に次いで2番目に人気のシリーズとなりました。
今回はTwiiterでのシェアやコメントをいただくことが非常に多く、総リツイート回数は800回以上に及びました。
アンナチュラルがドラマとして完成度が高く、法医学界や社会に向けて発信したメッセージに関心を示した人が多かった証だと思います。
ちなみに私はそれまでTwitterを自動更新通知のみに使用していましたが、これをきっかけに、積極的にコメントしたり、質問に答えたりするように運用を変えています。
さて、今回はドラマ放送後の恒例、解説記事総まとめです。
各話のあらすじと解説&感想記事をまとめておきますので、目次ページとしてお使いください。
また、ファンの方はこの記事で全話を振り返り、もう一度楽しんでいただけたらと思います。
目次
- 第1話 「名前のない毒…連続不自然死の謎を解け」
- 第2話 「死にたがりの手紙 一家無理心中…自殺に見せかけた事件の真相!?」
- 第3話 「予定外の証人 無実の男を救えるか? 勝率0.01%の逆転裁判」
- 第4話 「誰がために働く 謎の交通事故死!? ブラック企業に殺された夫」
- 第5話 「死の報復 盗まれたご遺体!? 亡き妻は自殺か?他殺か?」
- 第6話 「友達じゃない 謎のセレブパーティ連続殺人…同僚が容疑者!?」
- 第7話 「殺人遊戯 殺人犯がネットで生中継!? 囚われた人質を救え」
- 第8話 「遥かなる我が家 謎のビル火災! 焼死体が語る最後のメッセージ」
- 第9話 「敵の姿 連続殺人犯は近くにいた! 8年越しに掴む真実」
- 最終話 「旅の終わり 崩壊の危機…UDIメンバー最後の戦い」
第1話 「名前のない毒…連続不自然死の謎を解け」
主人公である三澄ミコト(石原さとみ)が属するのは、不自然死究明研究所(UDI)という架空の研究施設。
遺体の法医解剖を引き受けて死因を明らかにする、国の補助を受けた専門機関です。
第1話ではまず、わが国の解剖率は約1割と諸外国に比べてはるかに低いという現状を批判的に描く、このドラマのコンセプトが語られます。
そして、MERSコロナウイルスによる感染症が原因での死亡例が登場。
原因は病院の研究室から漏れたウイルスによる院内感染であり、大学病院がこれを隠蔽していたのをUDIが見事に見抜いたのでした。
記事では、日本の法医学の現状と、この危険なウイルス感染について解説しました。
アンナチュラル第1話 感想&解説|死因究明後進国を斬る法医学ドラマ
第2話 「死にたがりの手紙 一家無理心中…自殺に見せかけた事件の真相!?」
第2話では、一家4人の練炭自殺例が登場します。
ところが4人のうち一人は、死因が練炭による一酸化炭素中毒ではなく、なぜか凍死であることをミコトが見抜きます。
一酸化炭素中毒死と凍死の遺体は、皮膚の表面が同じ「サーモンピンク」という色に変化します。
練炭自殺の現場に凍死体を紛れ込ませれば気づかれにくいことを犯人が知っていたのでした。
法医学の知識をフルに使ってこの犯罪を見抜いたミコトたちは、どのような思考過程をたどったのか?
皮膚の色が変化する理由は?
これらについて詳しく解説しました。
アンナチュラル第2話 感想&解説|サーモンピンクの死体が語るもの
第3話 「予定外の証人 無実の男を救えるか? 勝率0.01%の逆転裁判」
包丁で刺し殺された女性の遺体がUDIに搬送されます。
犯人と疑われたのは女性の夫でしたが、夫は殺害を否定。
ミコトたちは解剖によって、凶器とされた包丁と傷の形の矛盾を見事に暴き、夫が無罪であることを証明します。
この時ミコトたちが指摘した重要なポイントは「凶器の種類」と「傷の種類」にありました。
ミコトが法廷で使った「有尖片刃器」という法医学用語の意味や、凶器と創部の分類について詳しく解説しました。
アンナチュラル第3話 感想|なぜ法医学者は傷から凶器を割り出せるのか?
第4話 「誰がために働く 謎の交通事故死!? ブラック企業に殺された夫」
UDIにバイクの単独事故で死亡した男性が搬送されます。
男性は、解剖の結果クモ膜下出血があることが発覚。
さらに、椎骨動脈解離が起きていたことも判明します。
男性が勤務する工場での過重労働が遠因でした。
第4話では、椎骨動脈解離とクモ膜下出血の関係や、単独事故と頭部外傷に関して注意すべきことが語られました。
臨床現場でも重要なこれらの点について、詳しく解説しました。
アンナチュラル第4話 感想&解説|誰もがなりうる病気、椎骨動脈解離の謎
第5話 「死の報復 盗まれたご遺体!? 亡き妻は自殺か?他殺か?」
UDIに、海で発見された若い女性の溺死体が搬送されます。
女性は自殺と判断されていましたが、夫を名乗る男性はそれに疑いを持ち、UDIに協力を依頼します。
ミコトたちは解剖の結果、溺死の割には肺の膨らみが小さく、水の吸い込みが少ないことが判明。
入水時にはすでに意識を失っていたことを見抜きます。
結果として女性は後ろから突き落とされ、水面で顔を強打したことが原因で起こるエベック反射で失神していたことが判明。
女性の同僚による他殺であることが分かりました。
解説記事では、溺死体の法医学的な特徴や、自殺と他殺をどのように見抜くのかについて詳しく説明しました。
アンナチュラル第5話 感想&解説|溺死体が発する苦しみのサイン
第6話 「友達じゃない 謎のセレブパーティ連続殺人…同僚が容疑者!?」
UDIの臨床検査技師、東海林(市川実日子)が所属する高級会員制ジムの知人がベッド上で突然死。
死因はなぜか窒息でした。
同じジムの別の男性も、謎の窒息死を起こしてUDIに搬送されていたことから、その関連性が疑われます。
UDIで解剖した結果、犯人が腕時計型のスポーツウォッチを遠隔操作して男性たちを感電させ、横隔膜をピンポイントで麻痺させていたことが分かります。
これを見抜いたのは、UDIで最も優秀な法医学者、中堂(井浦新)でした。
記事では、感電によってどのように横隔神経を麻痺させられたのか、なぜ窒息死に至るのかについて医学的に解説しました。
アンナチュラル第6話感想&解説|感電による横隔膜の麻痺はありえるのか?
第7話 「殺人遊戯 殺人犯がネットで生中継!? 囚われた人質を救え」
ある高校生がミコトに挑戦状を叩きつけます。
彼は「殺人実況生中継」としてインターネットでライブ配信を行い、死亡したクラスメイトを映し、死因を言い当てるようミコトに迫ります。
実際は、そのクラスメイトはいじめを苦に自殺しており、それを彼は全国に知らしめたかったことが分かります。
ここでポイントとなったのは、ミコトが遺体に直接触ることなく、体表面の様子から死因を見抜いたことでした。
死体の体表面の変化から、いかに多くのことが分かるのか?
死因を見抜くためにミコトがフルに使った法医学の知識を詳しく解説しました。
アンナチュラル第7話 感想&解説|医学部の法医学の講義で最初に学ぶこと
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第8話 「遥かなる我が家 謎のビル火災! 焼死体が語る最後のメッセージ」
雑居ビルの火災現場で発見された10人の遺体がUDIに運ばれます。
全員が焼死と思われましたが、一人だけは、腰にロープで縛った痕跡と頭蓋骨の骨折があることが判明。
他殺が疑われます。
しかし、ミコトたちの解剖と現場検証によって、男性の傷は火災の中ビルに取り残された人たちをロープを使って救出する際に生じたものであることが分かりました。
解説記事では、焼死体を観察するときに重要となる法医学の知識や、ミコトが使った「生活反応」という重要な法医学用語について解説しました。
アンナチュラル第8話 感想&解説|焼死体のレンガ色の血腫が意味するもの
第9話 「敵の姿 連続殺人犯は近くにいた! 8年越しに掴む真実」
空き家に置かれたスーツケースから女性の遺体が発見され、UDIでの解剖の結果、胃の内容物からボツリヌス菌が発見されます。
当初、これが原因でのボツリヌス中毒と思われましたが、現場でホルムアルデヒドが酸化してできる蟻酸が発見されたことから、ホルマリン中毒が原因と判明します。
ホルマリンには防腐作用があるため、女性の体は腐敗が進みにくく、死亡推定日時をミスリードされていました。
解説記事では、ホルマリンが医療現場でよく使われる製剤であることや、ボツリヌス中毒について詳しく解説しました。
また、第9話のストーリーに合わせて、私たちが医学部で法医学と解剖学をどう学ぶのか、実体験に基づいて記事にしました。
アンナチュラル 第9話感想|医師にとって身近なホルマリンと蟻酸の関係
アンナチュラル 解説|医学部では法医学と解剖学をどんな風に学ぶのか?
最終話 「旅の終わり 崩壊の危機…UDIメンバー最後の戦い」
最終回では、中堂の恋人を殺した犯人がついに明らかになります。
ところが犯人は殺害を否定。
UDIでも殺害を示す確たる証拠をつかめません。
中堂は長年の因縁から、犯人の男性を長きに渡って取材していたジャーナリストの宍戸を脅して証拠を入手するため、巧妙な手を使いました。
ここで登場したのが、テトロドトキシンとエチレングリコール。
いずれも劇毒物です。
そしてエチレングリコールの解毒剤であるホメピゾールという薬剤も登場しました。
これらの毒物の仕組みや、解毒作用の仕組みについては意外に簡単に理解することができるため、記事ではこの点を分かりやすく解説しました。
さらに、医療現場で重要となる薬物中毒について知っていただくため、追加で身近な薬物について記事を書きました。
アンナチュラル最終回 感想|意外に身近なエチレングリコールの不思議
アンナチュラル解説 番外編|必ず知っておくべき危険な薬物中毒の知識
アンナチュラルではこのように、各話で様々な死因が描かれましたが、自殺や犯罪死として最も多い「首吊り」や「首絞め」は登場しませんでした。
重要なポイントなので、番外編としてこちらも解説記事にしました。